どんなに優れた医療にも必ずネガティブな面があります。SNSやブログなどでは、ネガティブな面がクローズアップされやすく、比較的新しく、身近な人の意見を聞く機会が少ないインプラントに関しては、不安を感じている方も多いようです。
確かに「インプラントはだめ」とか「インプラントで失敗した」などの書き込みを見ると、インプラント治療に対して不安を抱いてしまいますよね。
そこで今回はインプラント治療に伴うリスクや合併症について解説し、漠然とした不安感や疑問を解消していただけたらと思います。
目次
■「インプラントはだめ・失敗」という話は本当?
まずは「インプラントはだめ・失敗」という話の真相に触れておきましょう。実はインプラント治療というのは、成功率が比較的高く、従来法よりも装置の寿命が長い傾向にあります。
この時に参考になるのが「インプラントの10年生存率」という有名な統計です。インプラントの症例では、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋めてから10年経過しても問題なく機能している患者様が90%を超えていることがわかっています。
※歯科インプラント治療指針|厚生労働省
ちなみにこれは10年でインプラントが寿命を迎えるというわけではなく、90%以上の確率で少なくとも10年はインプラントが持つことを意味します。
実際、きちんとセルフケアやメンテナンスを行っていれば、インプラントが15年、20年持つケースは珍しくないのです。
医療技術がそれほど現在ほど進歩していなかった時代でも、患者様が亡くなるまで40年間、インプラントが機能し続けた症例もあります。このことからインプラント治療が特別に「ダメ」「失敗しやすい」とは考えにくいでしょう。
※Dental implants still functional after 40 years | British Dental Journal
◎インプラントが失敗する可能性はゼロではない
このようにインプラントは成功率が比較的高く、長持ちもしやすい治療ではありますが、失敗するリスクはゼロではありません。
おそらく、SNSやブログなどで見かける「インプラントは絶対だめ」「インプラントを選ぶのは失敗」という書き込みは、何らかの理由でインプラント治療が失敗した可能性も否定できません。
次の章では、インプラントの失敗や後悔を招く合併症とリスクについて解説します。
■インプラントを失敗へと導く合併症
インプラントで以下に挙げる合併症を発症すると、治療そのものが失敗に終わるリスクがあるため十分な注意が必要です。
◎重要な血管・神経の損傷
下顎のインプラント手術では、下顎管(かがくかん)という管の中に重要な血管と神経が走っています。これを損傷してしまうと術中の大量出血や術後の神経麻痺などが起こることがあり、インプラントはだめという後悔へとつながることがあります。
◎上顎洞への穿孔
上顎のインプラント手術では、上顎洞という空洞にインプラント体が飛び出てしまうリスクがあります。その結果、上顎洞炎という合併症が起こり、インプラント治療そのものも失敗に終わってしまう場合も。
◎感染症にかかる
インプラントに限らず外科手術には必ず感染症のリスクを伴います。とりわけインプラント治療では、「インプラント周囲炎」という感染症に注意が必要です。
インプラント周囲炎はインプラント特有の歯周疾患で、進行すると顎の骨が人工歯根を支えられなくなり、最悪の場合は抜け落ちてしまうなど、インプラント治療の失敗を招きます。
◎金属アレルギーの発症
インプラント治療で用いる人工歯根(フィクスチャー)は、純チタンまたはチタン合金で作られているため、金属アレルギーを発症する可能性があります。
ただし、チタンは生体親和性が高く、金属アレルギーを引き起こしにくいことでも有名で、そのリスクは低いです。それでも例外的にチタンアレルギーを発症した方は、インプラントの失敗となってしまうため、「インプラントはだめ」というネガティブな印象を持つことになります。
■インプラントで失敗しないための方法
上段で取り上げたインプラントの合併症は、次の方法でそのリスクを抑えられます。
◎精密な検査・診断
歯科用CTを活用した精密検査・診断を実施することで、インプラントに伴う多くの合併症は回避しやすくなります。
またコンピューターガイドで埋入位置のシミュレーションを行い、正確な位置にインプラント体を埋め込むことができます。
◎サージカルステントの使用
当院では、インプラント手術の精度を高める上で「サージカルガイド」を用いています。インプラントを埋め込む理想的な位置・角度・深さを記録できるサージカルガイドは、術中の合併症予防はもちろん、顎骨へも定着しやすくなるため、予後も良くなる可能性が高まります。
ただし、インプラント治療でサージカルガイドを活用しているかどうかは、歯科医院によって変わるため、その点は事前に確認しておく必要があります。
■まとめ
今回は、インプラントはだめ・失敗すると言われる理由について解説しました。インプラント治療には、人工歯根を顎の骨に埋め込む手術が必須となっており、いくつかの合併症リスクを伴うことから、入れ歯やブリッジよりも失敗しやすいように思われがちです。
また、インプラント手術に伴う合併症リスクは、事前の検査・診断を精密に行ったり、サージカルガイドを活用したりすることで抑えることが可能です。
インプラント治療についてご不明点やご不安な点があれば、いつでもお気軽に名古屋市中村区の名駅ファイン歯科・矯正歯科までご相談ください。